入試結果の開示に関する考え方
1 はじめに
2 個人情報保護法における本人による開示
3 情報公開法による開示
4 センター試験
5 国立大学協会の考え方
6 まとめ
1 はじめに
以前、大学の情報公開の仕事をしていた時に、入試結果の開示は情報公開にほとんど含まれていないことに気が付いた。現状の試験結果の開示方法は、いわゆる「簡易開示制度」を元に行っているものと考えられており、これは、法的根拠があるかどうは分からないが、個人情報保護法における本人による開示とは別の制度になると思う。おそらく、公的機関が実施する積極的な情報開示、例えば所属人数や財政など公的機関が当然すべき情報開示の一つとしてみなしている(法的根拠は憲法の知る権利あたりではないでしょうか。)。
しかし、例え積極的な情報開示が望まれるものであったとしても、個人情報には変わらないので、試験結果の情報開示であれば、試験終了後一定期間内に本人が直接窓口に来て、受験票と本人確認ができる書類を持参して、その場で試験結果を閲覧するというのが一般的な方法になる。もちろん公的機関の情報開示ですので手数料は発生しないし、実費はせいぜいコピー代であろう(入試窓口の担当者としては大変しんどいのでしょうが。)。
この手続きを郵送で行っている機関もありますが、試験後に受験票と本人確認できる書類を送って初めて情報開示するのが望ましいと考える。
2 個人情報保護法における本人による開示
個人情報保護法ですが、乱暴に言えば公的機関において個人情報は基本的にはもたないという考え方である。それは「利用目的の特定」という条項があり、個人情報を取得する際は利用目的を明示し、利用目的以外には使わず、必要がなくなった際は破棄するからである。
情報公開の担当部署で試験結果を開示している制度は、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律によるもので、第12条と14条を見ていいただくと分かるのですが、本人が開示請求をすれば、原則開示となる。
また、「請求」という表現ですからないものに請求はできまず、それはこれから確実に発生する個人情報でも同じことである。あるものに対して行うのが請求になる。つまり、合格発表がでるまでは手続きができなく、入試の募集段階でやるのは情報公開の制度では想定していない。
これにかかる費用や手数料「開示手数料」は300円。(オンラインは200円)あとはコピー代などをとるのを「開示実施手数料」といいますが、開示手数料を超える金額(つまり300円)にならないと発生しないので、基本的にないです。郵送料は切手で徴収となっています。
手順は以下のとおりです。
一 本人による開示請求(書類と開示手数料)
二 受付後30日以内に開示決定→通知(延長も可能)
三 本人は閲覧かコピーをもらうかの2択
四 閲覧であれば所定日に実施、コピーであればそれを渡す(どちらも有料)
ちょっと気になるのは、応募時は高校生で未成年が大半なので、その場合保護者が請求しなければならない。卒業すれば18歳になるので大丈夫かと思うのであるが。
3 情報公開法による開示
情報公開法は不特定の第三者(要は国民)が公的機関の情報を公開してほしいということなので、個人情報は原則公開不可となる。これも当たり前といえば当たり前だが、個人情報保護法における本人の開示請求とは異なる。非常にややこしい。
4 センター試験
センター試験の試験結果開示だが、大学入試センターの実施要項によると、大学に対しては「成績手数料」という名目で570円/回・人。受験生に対しては「成績通知手数料」として800円。内訳はわからないが、業者への印刷代と郵送料と思われる。封がされている手紙なので印刷代がかかり。手数料が含まれているかどうかは不明。ない可能性が高い。
⑸ 各大学は,大学入試センターから大学入学共通テスト及び過年度の大学入試センター試験の成績の提供を受けるに当たっては,入学志願者 1 人 1 回につき,750 円の成績提供手数料を大学入試センターへ納付するものとする。 17 成績の本人通知 ⑴ 大学入試センターは,大学入学共通テスト出願時の入学志願者本人からの希望の申出に基づき,成績を通知する。 |
※大学入試センターの実施要項より。
文科省の実施要項によると成績を受験者数と同じくくりにし、情報開示という表現している。おそらく個人情報保護制度の情報公開ではなく、一般的な情報開示とみなしている可能性が高い。
2 入試情報の取扱い |
※文科省の実施校要項より
5 国立大学協会の考え方
国立大学協会も入試の情報公開については、上記1と2のように大きく二種類に分けている。(文中では3つと述べていますが)
それは「情報提供」と「法律(個人情報保護法・情報公開法)」に基づく公開という考え方になる。情報提供は志願者数など当たり前の情報は積極的に提供しましょうとある。これに個々の試験結果はなく努力義務にもなっていない。あるのは合格者の統計的な成績情報だけである。国大協としては、試験結果の開示は、個人情報保護法における本人の開示で考えていると思われる。
6 まとめ
試験結果の開示において、「情報提供」とみなすのであれば、利益を含むような手数料をとるのは難しいと考える。公的機関は国の税金で運営されているので、情報提供は当然無償でしょう。ただ気になるのは大学入試センターの手数料という考え方である。金額を見ると印刷代と郵送料である最低限の実費の総額を丸めた(四捨五入)だけのように見える。手数料は無いように見えるのだが。
もう一つの個人情報保護法における本人の開示であるが、手続きが法で決まっており、入試課だけでできるような運用は困難である。
これとは別に第3の考え方、いわゆる単純なサービスととらえる方法、つまり特別な証明書を発行するということもありなのかもしれない。受験生や文科省から非難されそうではあるが。