国立大学にとっての意思決定とは

事務をしていると、時々どうやったら大学として意思決定できるのかと不安になってしまう。課長がオッケーといっても何か大丈夫なのだろうかと思うし、監査とか入って何でこんなことやってるのと突っ込まれ、アタフタするのもできれば避けたい。ということでちょっと調べてみた。

 

まずはやっぱり法律だろう。我らが憲法国立大学法人法では学長は総理するとなっている。

(役員の職務及び権限)
第十一条 学長は、大学の長としての職務(大学総括理事を置く場合にあっては、当該大学総括理事の職務に係るものを除く。)を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理する

 

そして、ちょっと前までの憲法で今でも大事な学校教育法ではこんな感じである。

第九十二条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
○2 大学には、前項のほか、副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
○3 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。

 

他にも細かいことはあるが、概ね学長が決定するものと思われる。

んで、学長はなんでも決定できるもんだと独裁政治になってしまうので、国立大学法人法にはいろいろとけん制がされている。それが経営協議会(第20条)と教育研究評議会(第21条)の2大審議機関である。重要事項であればどっちかあるいは両方とも審議をしなければならない。

そして、さらに役員会に審議することがある。だから超重要案件であれば、トリプル審議という恐ろしいことになる

(役員の職務及び権限)
第十一条 学長は、大学の長としての職務(大学総括理事を置く場合にあっては、当該大学総括理事の職務に係るものを除く。)を行うとともに、国立大学法人を代表し、その業務を総理する。
2 理事長は、国立大学法人を代表し、その業務を総理する。
3 学長は、次の事項について決定をしようとするときは、学長及び理事で構成する会議(第五号において「役員会」という。)の議を経なければならない。
一 中期目標についての意見(国立大学法人等が第三十条第三項の規定により文部科学大臣に対し述べる意見をいう。以下同じ。)及び年度計画に関する事項
二 この法律により文部科学大臣の認可又は承認(第十三条の二第一項及び第十七条第六項の承認を除く。)を受けなければならない事項
三 予算の作成及び執行並びに決算に関する事項
四 当該国立大学、学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止に関する事項
五 その他役員会が定める重要事項

 

この審議を通れば決定かというとそうではない。最後は文書決裁がまっている。審議から承認はあくまでも承認であって決定ではない。学長が決定するには文書で残さなければならない。そうでないと大学の説明責任は果たせないし、モリカケ問題のように情報公開にも耐えることができない。

ということで重要案件の最短決定コースは経営協議会/教育研究評議会 → (役員会) → 学長決裁 となる。

独立行政法人法や公益財団法人の法律を参考にしたかどうかは定かではないが、とにかく簡単にはいかない。結果よりもプロセスの方が大事であることは言うまでもない。審議しなければならない会議をスルーしたら法律違反である。(違反するとどうなるかは知らないが)まあ言い過ぎではあるが、大学を始め公的機関の意思決定は大変である。中央省庁の役人はこれとは比較にならないほどの審議を重ねなければならない。本当に彼らはすごい集団だ。大学職員で良かったとつくづく実感した。