国立大学の教授はどこに所属するのか

 大学の事務をやっていて先生からよくある質問の一つが、名刺に所属先をどのように書いたら良いか分からないから教えてくれと言われる。そしたら「国立大学法人〇〇大学大学院工学研究科 教授」または「国立大学法人〇〇大学(教員組織) 教授」でいいんじゃないですか~と返している。うちの人事課は大学法人が雇用契約しているから、国立大学法人で良いというのが理由だそうだ。なんか微妙なので法律を調べてみた。

 まず国立大学法人というのなら国立大学法人法である。

第一款 役員及び職員
(役員)
第十条 各国立大学法人に、役員として、その長である学長(当該国立大学法人が設置する国立大学の全部について第三項に規定する大学総括理事を置く場合にあっては、理事長。次条第一項並びに第二十一条第二項第四号、第三項及び第五項を除き、以下同じ。)及び監事二人を置く。
 各国立大学法人に、役員として、それぞれ別表第一の第四欄に定める員数以内の理事を置く。
(以下略)

 学長や理事は置くとあるが、教員や職員を置くとは一言も書いていない。何故だか分からんがひどい。職員側にとってはとりあえずなんでも良いから置いといてくれよと言いたい。全文読むと感じるのは、職員の小間使い感が半端ないところである。

 もう一つの代表的な法律として学校教育法がある。これは国立大学法人ではなく大学組織のための法律であるが、こちらにはちゃんと置いてある。学長は法人組織と大学組織の二つに置かれているが、教員や職員は大学側のみである。(余談ではあるが技術職員がないのも可哀想ではある。)

第九十二条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
 大学には、前項のほか、副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
 学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。
 副学長は、学長を助け、命を受けて校務をつかさどる。
 学部長は、学部に関する校務をつかさどる。
 教授は、専攻分野について、教育上、研究上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者であつて、学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。
(以下略)

 

 法律を見ていると、教育研究をしている先生にとっては、名刺に国立大学法人と記載するのは違和感でしかないと思う。法人の仕事なんてまずしないからね。普通に〇〇大学で良いと思う。

 あとは教員組織がどこに位置づけされているかだ。この組織が学内規程により法人組織であれば国立大学法人と名刺に書いた方がということになる。要は法人にある教員組織に所属して、大学組織に派遣されているという仕組みの大学は多いと思う。ややこしい話だ。

 いずれにせよ、国立大学法人法を見ていると、かなり狭い考え方で民間組織にある理事会をイメージしている。取締役会だけのイメージだ。教職員はいるようでいない。それを各大学は拡大解釈して教員も職員も所属させている。それで何か問題があるわけではないが、また忘れた時に先生から自分の所属は何?って質問がくるのだろう。やれやれだ。

 

 

入試結果の開示に関する考え方

1 はじめに

2 個人情報保護法における本人による開示

3 情報公開法による開示

4 センター試験

5 国立大学協会の考え方

6 まとめ

 

1 はじめに

 以前、大学の情報公開の仕事をしていた時に、入試結果の開示は情報公開にほとんど含まれていないことに気が付いた。現状の試験結果の開示方法は、いわゆる「簡易開示制度」を元に行っているものと考えられており、これは、法的根拠があるかどうは分からないが、個人情報保護法における本人による開示とは別の制度になると思う。おそらく、公的機関が実施する積極的な情報開示、例えば所属人数や財政など公的機関が当然すべき情報開示の一つとしてみなしている(法的根拠は憲法の知る権利あたりではないでしょうか。)。

 しかし、例え積極的な情報開示が望まれるものであったとしても、個人情報には変わらないので、試験結果の情報開示であれば、試験終了後一定期間内に本人が直接窓口に来て、受験票と本人確認ができる書類を持参して、その場で試験結果を閲覧するというのが一般的な方法になる。もちろん公的機関の情報開示ですので手数料は発生しないし、実費はせいぜいコピー代であろう(入試窓口の担当者としては大変しんどいのでしょうが。)。

 この手続きを郵送で行っている機関もありますが、試験後に受験票と本人確認できる書類を送って初めて情報開示するのが望ましいと考える。

 

2 個人情報保護法における本人による開示

 個人情報保護法ですが、乱暴に言えば公的機関において個人情報は基本的にはもたないという考え方である。それは「利用目的の特定」という条項があり、個人情報を取得する際は利用目的を明示し、利用目的以外には使わず、必要がなくなった際は破棄するからである。

 情報公開の担当部署で試験結果を開示している制度は、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律によるもので、第12条と14条を見ていいただくと分かるのですが、本人が開示請求をすれば、原則開示となる。

 また、「請求」という表現ですからないものに請求はできまず、それはこれから確実に発生する個人情報でも同じことである。あるものに対して行うのが請求になる。つまり、合格発表がでるまでは手続きができなく、入試の募集段階でやるのは情報公開の制度では想定していない。

 これにかかる費用や手数料「開示手数料」は300円。(オンラインは200円)あとはコピー代などをとるのを「開示実施手数料」といいますが、開示手数料を超える金額(つまり300円)にならないと発生しないので、基本的にないです。郵送料は切手で徴収となっています。

 手順は以下のとおりです。

一 本人による開示請求(書類と開示手数料)

二 受付後30日以内に開示決定→通知(延長も可能)

三 本人は閲覧かコピーをもらうかの2択

四 閲覧であれば所定日に実施、コピーであればそれを渡す(どちらも有料)

 ちょっと気になるのは、応募時は高校生で未成年が大半なので、その場合保護者が請求しなければならない。卒業すれば18歳になるので大丈夫かと思うのであるが。

 

3 情報公開法による開示

 情報公開法は不特定の第三者(要は国民)が公的機関の情報を公開してほしいということなので、個人情報は原則公開不可となる。これも当たり前といえば当たり前だが、個人情報保護法における本人の開示請求とは異なる。非常にややこしい。

 

4 センター試験

 センター試験の試験結果開示だが、大学入試センターの実施要項によると、大学に対しては「成績手数料」という名目で570円/回・人。受験生に対しては「成績通知手数料」として800円。内訳はわからないが、業者への印刷代と郵送料と思われる。封がされている手紙なので印刷代がかかり。手数料が含まれているかどうかは不明。ない可能性が高い。

 

⑸ 各大学は,大学入試センターから大学入学共通テスト及び過年度の大学入試センター試験の成績の提供を受けるに当たっては,入学志願者 1 人 1 回につき,750 円の成績提供手数料を大学入試センターへ納付するものとする。
⑹ 各大学は,提供された大学入学共通テスト及び過年度の大学入試センター試験の個人別成績を,
当該大学の判断により受験者本人に開示することは差し支えないこととするが,その保管・管理等に十分配慮するものとする。なお,開示時期は,令和 3 年 4 月 1 日(木)以降とするものとする。

17 成績の本人通知

大学入試センターは,大学入学共通テスト出願時の入学志願者本人からの希望の申出に基づき,成績を通知する。
⑵ 成績通知は,令和 3 年 4 月 1 日(木)以降に行う。
⑶ 成績通知手数料は 800 円とし,成績通知を希望する入学志願者は,検定料と併せて納付するものとする。 

大学入試センターの実施要項より。

 

 文科省の実施要項によると成績を受験者数と同じくくりにし、情報開示という表現している。おそらく個人情報保護制度の情報公開ではなく、一般的な情報開示とみなしている可能性が高い。

2 入試情報の取扱い
(1) 個別学力検査における試験問題やその解答については,当該入試の実施以降に受験者や次年度以降の入学志願者が学習上参考にできるようにするため,次のとおり取り扱うものとする。
① 試験問題については,原則として公表するものとする。
② 解答については,原則として公表するものとする。ただし,一義的な解答が示せない記述式の問題等については,出題の意図又は複数の若しくは標準的な解答例等を原則として公表するものとする。
なお,試験問題中の著作物の権利処理が困難である場合には,著作物名を記述すること等により問題の内容が明らかになるよう努める。
(2) 各大学は,受験者本人への成績開示や,入試方法の区分に応じた受験者数,合格者数,入学者数等の入試情報の積極的開示に努める。また,試験の評価・判定方法についても,可能な限り情報開示に努める。
(3) 入学志願者の特定や出願資格・要件の確認,各種連絡等のために必要な情報を除き,能力・意欲・適性等の評価・判定に用いない情報を入学志願者に求めないこととするとともに,合格者の氏名や住所,調査書に記載された内容等,各大学が選抜を通じて取得した個人情報については,入学者選抜並びに必要に応じ入学後の学籍管理,学習指導及び学生支援関係業務に限って利用するものとし,外部への漏洩や目的外の利用等がないよう,その保護に十分留意しつつ,適正な取扱いに努める。

文科省の実施校要項より

 

5 国立大学協会の考え方

 国立大学協会も入試の情報公開については、上記1と2のように大きく二種類に分けている。(文中では3つと述べていますが)

 それは「情報提供」と「法律(個人情報保護法・情報公開法)」に基づく公開という考え方になる。情報提供は志願者数など当たり前の情報は積極的に提供しましょうとある。これに個々の試験結果はなく努力義務にもなっていない。あるのは合格者の統計的な成績情報だけである。国大協としては、試験結果の開示は、個人情報保護法における本人の開示で考えていると思われる。

 

6 まとめ

 試験結果の開示において、「情報提供」とみなすのであれば、利益を含むような手数料をとるのは難しいと考える。公的機関は国の税金で運営されているので、情報提供は当然無償でしょう。ただ気になるのは大学入試センターの手数料という考え方である。金額を見ると印刷代と郵送料である最低限の実費の総額を丸めた(四捨五入)だけのように見える。手数料は無いように見えるのだが。

 もう一つの個人情報保護法における本人の開示であるが、手続きが法で決まっており、入試課だけでできるような運用は困難である。

 これとは別に第3の考え方、いわゆる単純なサービスととらえる方法、つまり特別な証明書を発行するということもありなのかもしれない。受験生や文科省から非難されそうではあるが。

 

 

 

 

大学職員から見た博士後期課程

 文科省メールマガジンは大変便利で、文科大臣の記者会見や各種会議の案内や結果などを連絡してくれる。国の教育行政に疎い者としては、何となくの雰囲気がつかめて日頃の業務に役立っている。

 この中で、大学院部会というものをやっているらしく、議事録のリンク先が掲載されていたので覗いてみた。内容は大雑把に博士課程、特に博士後期課程(ドクター)に進学する学生が少なく問題となっているようだ。まあ良く聞く話である。

www.mext.go.jp

 日本の博士課程は、1990年代から2000年初頭までの大学院重点化の政策により、大量の定員を抱えることになった。国の政策で良くあるのが供給を増やしたらきっと需要も増えるだろうということだ。

 自分も民間にいたからわかるのだが、そもそもドクターをどうしても欲しいという部署はほとんどない。また、大学院重点化だと叫んだ国の機関ですらそうである。新卒一括採用の場で学部の学生と一緒にドクターの学生が混じっていれば、採用側は、何でドクターの人がこんなところに来たの?あるいはこんなすごい研究をした人は、配属先できっと持て余すだろう、よそで採用してもらった方が幸せだと勝手に解釈してしまう。ドクターだってプライドあるから学部生と同じように就活したくないのは当然だ。

 ここで大学院部会での議論になるわけであるが、事務職員側から見ればしんどい内容の連発である。進学インセンティブを見せろとか、キャリアパスがどうとか、やれ三つのポリシーの情報公開がどうかとか事務作業のオンパレードである。それを必死こいて整備したところで学生は見るわけでもなし、カリキュラム等のサービスを増やしたところで博士論文の足しにもならない。企業インターンシップなんか必修にしたら大変なことになるだろう。多分導入されると思うが。

 もうこれ以上サービスしたって進学率なんか変わらない。大量の高学歴者を大学に囲い込むのは社会にとって損失だ。ドクターの定員を減らし、授業料を安くすべきだ。そうすれば進学率や卒業後のポストがない問題など全て解決できる。

 

 

 

大学職員が知っておくべき研究インテグリティとは

 研究インテグリティは、研究協力系の大学職員としてはここ最近のパワーワードだ。詳しくは以下のリンク先を参照いただきたいのだが、事務側としてはかなりきつい制度になりそうだ。

www8.cao.go.jp

 要は、米中関係の悪化からアメリカ周辺国では対中政策を強化している訳だが、それが日本にも求められている格好だ。これを政治家からの要請かどうかは分からないが読売新聞がせっせと報じている。

www.yomiuri.co.jp

日本の大学は技術流出に甘い? アメリカが危惧を強める中国の“科学技術剽窃”問題…不満を抱える科学者たちの“本音” | 文春オンライン

 

 大学職員が何をすべきかというと、主なものは学内規則の策定、国が作成するチェックリストの対応、それから研究者のエフォート管理だ(まだ予定の段階だが。)研究者が勝手に共産圏にデータを渡さないよう大学が厳しく監視するというものである。当然研究者の活動状況(エフォート)は、全て研究インテグリティ(公正性)に基づき大学側が全て管理しなければならない。

 2022年度から本格稼働らしいが、国は全然進んでいなさそうである。どうやら共同研究先をすべて公開しなければならないので、産業界との交渉が難航しているらしい。(民間企業との共同研究は公開不可のものが多い。社名ですら。)

 研究に対する倫理的な活動は、研究費不正、研究倫理などがあるが研究インテグリティが加わることになる。どれもかなりのボリュームなので担当になった人はかなり大変になるだろう。

 

 

 

国立大学職員の新規採用職員についての雑感

 国立大学職員の採用試験が終わり、今年のスケジュールだと早ければ10月くらいから採用された職員がやってくる。自分の時は8月スタートだったのでかなり遅くなった印象ではある。

 民間企業であれば、新規採用された職員はどこでも数週間から長くて半年以上の研修期間があるが、それに比べればほぼゼロである。わずかな全体研修と職場のITシステムをちょっと習って現場にぶち込まれる。はっきりいって即戦力である。

 とはいえ今の若い人たちは皆Word、Excel、パワーポイントを使えるし、メールもお手のものなので、ささっとやってしまう。ググれば自分のところや他大学のマニュアルは出てくるのでサクッと問題解決する。なのでおっさんから見たらまあ何とかやれているように見えてしまう。昔は新人さんが入ってきたらメールの書き方から送信まですべて教えていたのに。もうおっさんの出る幕はないと思う。わずかな実績と昔の知識で何とかやっていこう。

公務員1年目の教科書

大学職員から見た大学生の就活やキャリア教育

 以前、学生センターで就活の担当していたことを書きたいと思う。就活支援は学生からもっとも感謝される部署で多くの大学で人気?!のポジションの一つである。人数も昔は一人でやっていたのを、今はやれキャリア教育だなんだといって、多くの予算と人員を当てている。

 昔はといっても、平成16年の国立大学法人化するぐぐらいまでは、そもそも進路指導は教員がやるものであって、事務は無料職業紹介、いわゆる求人票の斡旋がすべてであった。学校は厚労省に届出すれば無料職業紹介ができるのでどこの大学でもやっているのだが、ちゃんとした斡旋をやっているの大学はほとんどないだろう。理由は簡単である。斡旋するには高度の経験と知識が必要だし、うまくいかなければ企業・学生からクレームがくる可能性があるからだ。だから、求人票だけ公開して問い合わせがあったら自分で連絡しな、あるいはハローワークで聞いてみな、最後は先生のところへ行きなで終わりである。今は求人票が電子化してしかも無料の求人システムのサービスもあるので、本当に手間いらずである。

 そういえば、求人票の整理よりも大変な仕事があった。進路状況調査である。これは学生から直接、就職先を聞き出すのである。これは今でも大変な仕事で、だいたい就職が決まれば、大学とは疎遠になる傾向がある。理系は研究しているので大学にいるが、文系は行方不明で音信不通なることが多いので、友達に聞いたり親に確認したりと全然終わらない。最悪な仕事である。

 まあこんな感じでイマイチなことばっかりを書いたのだが、これが大変やりがいのある仕事に変わっているのだ。それがキャリア教育である。事務員が教育の事業をできるのである。事務仕事しかできない人間が、大学生の進路指導に足を突っ込むのである。(つづく)

 

 

大学職員の在宅勤務

 4月に突然在宅勤務となり、自宅の仕事環境アップのためにいろいろと購入してみた。

 

 わが職場はteamsというweb会議のアプリを使用しており、自分はパソコンではなくスマホで受信しているため、スマホスタンドを買ってみた。これはかなり丈夫で、スマホはおろかswitchやipadも保持できるというすぐれもの。

 

 web会議で必須なのがワイヤレスヘッドセット。これがないと雑音やハウリングしてしまう。昔買ったものがまさか仕事に活きるとは、、、今回買ったのはイヤーチップ。

 

 最後はマウス。自分は1300円くらいで買ったので、驚異の7割引き。サイドボタンはマジで必須。職場もワイヤレスマウスだが、まわりの人はほとんどが有線でサイドボタンなしの支給品。みんな買えばいいのにな。

これに大昔買ったワイドモニターでデュアルディスプレイ化。所詮事務屋なのでこれぐらいの投資で十分である。本当はオフィスチェアーがほしいのであるが。